金髪猫。












Blond Cat





「ゾロ、あんた………ホントにこの男に出し抜かれたの?」
「……………………」
「ちくしょー!なんって失礼な野郎だ!!」
「うわー、マジで痙攣してるぞ、コイツ。ウソップ、お前強いなー、一発でやっつけちまった」
「バカヤローーーーー!男は顔じゃねぇぞ!…………そうだよな、カヤ」
「当たり前でしょ、男は顔じゃないわ。金よ」
「…………………………」
「じゃあウソップ、お前ダメダメだなー。もっと頑張れよー」
「テメ、ルフィ!それならお前だってダメじゃねぇか!!!」
「バカだなーお前、俺が女に見えるのか?」
「そういう意味じゃねぇよ!」
「……取り合えずこの泥棒野郎、ちゃんと捕まえとかないとね。ゾロ、コイツが逃げないように椅子に縛り付けて」

ナミはゾロをあごでしゃくった。
ゾロは仏頂面で反発する。

「なんで俺が………自分でやれよ」
「アンタねぇ…………それっくらい素直にやりなさいよ。ちっとも役に立たないんだから。今度から寝マリモって呼ぶわよ、寝マリモ」
「俺は命令されるのが嫌いなんだ!!前に言っただろ!!」
「アンタね………ワガママ言ってないで自分の仕事くらいちゃんとやんなさい」
「仕事?」
「ワタシは航海士、ルフィはキャプテン、ウソップは砲撃手…………アンタ、雑用でしょ?」
「ざ…………………!!」


がーん。


ゾロのアイデンティティに2000のダメージ。

「だから今はアンタの唯一の活躍の機会なのよ?さっさとして頂戴」
「く………………!」

ゾロは渋々、テーブルクロスでキディを縛り上げる。

「こんなに簡単に三千万ベリーの賞金首が捕まってもいいのかしら………もしかして偽物じゃないでしょうね、エース」
「いや、俺に聞かれてもなァ………でも、裏の世界で『Cheeky Jesus』っつったらハル以外にねぇよ?」
「……ま、海軍に訊いてみればいいか。あ、ゾロ!ちゃんと椅子に座らせて固定してよ!」

キディは完全に気絶しているのか、ピクリともせずにうなだれている。椅子に座らされた上からまた、テーブルクロスがぐるぐる巻かれ、起きても移動は不可能だろう。
『山猫男爵亭』の従業員は先程から何か言いたげだが、暗雲を背負ったゾロに話しかける勇気はないようだ。

「さて……………イッツァ復讐タイムよ」

ククク……とナミは唇をつり上げて笑った。ウソップの背筋がぞぞ、と逆立つ。

(ま、魔女の降臨……………!)





+++ +++ +++





しばらく起きそうもないキディに、ゾロが一発手刀を入れた。

「ん………………」

首を振りつつ覚醒したキディが最初に見たのはゾロだった。

「My God……俺ァ、死んじまったのか…………マリモ地獄ってホントにあったんだなァ……クソ、ジジイの言う通りだだった」
「どういう意味だァ!!」
「落ち着きなさいよ、ゾロ」

ごつ、とナミがゾロの頭にげんこつを入れる。

「ああ、ナミさん…………わざわざこんな事をしなくても、俺の心はとっくに君に縛り付けられているのに」

ナミを見た途端に、キディの周りにハートが自動発生した。

「なあ、アレってどっからでてくるんだろうなー」
「さあ………ノリだろ」

D兄弟は我関せず、と焼き肉を食っていた。従業員や他の客も、この事態を黙殺することにしたらしい。逃避、という言い方もできる。『非日常』にでくわしたときに一般人がとれる行動と言えば、見て見ぬフリくらいだろう。

「Cheeky Jesus………見事に捕まった気分はどう?」
「ちょっと暑いですね………テーブルクロスの保温効果はかなりのものがあるみたいですよ?それともこれが、恋の温度なんですかね」
「ふん、余裕こいてられるのも今のうちよ?海軍に行く前に、ワタシのお宝と、アンタが今までさんざんかせいだハズのお宝!何処にあるのか洗いざらいゲロして貰うわ!」
「お前、盗品までかっさらうつもりかよ…………」
「黙れウソップ!うちの財政状況はせっぱつまってるの!発展途上国よりエンゲル係数が高いんだから!」
「エンゲル係数ってなんだ?エース。食えるのか?」
「…………………お前、なんでこんなヤツに育っちまったんだろうなァ………ナミちゃんに同情するぜ」

焼き肉の皿は加速度的に増えていく。従業員の顔はひきつりまくっていた。

「さあ、吐きなさい!洗いざらい」
「ナミさん、まだ愛の言葉が足りないと?いいですよ、レディ………貴女が望むならいくらでも」
「違うわぁ!お宝の在処よ、お・た・か・ら!とぼけないで………さっさと言わないと」

ナミの目が細くなる。

「言わないと?」

それを受けて、キディは不敵に笑った。テーブルクロスでぐるぐる巻きでは、あまり格好も付かないが。

「ふっふっふ……………今からアンタの目の前で、ウソップとゾロとルフィに裸踊りさせるわよ!!」
「んなっ!!!?そ、それだけはご勘弁を………………!!!!!」

いきなり態度が180度転換するキディ。

「「テメェら、ふざけんなーーーーーーーーーーー!!!!」」


「裸踊りって焼き肉屋でするモンなのか?エース」
「それもノリだろ…………………」





BACK   NEXT NOVEL