それは 数千年 数万年の 昔
かの地には 砂と風とが あった
それは 数百年 数千年の 昔
かの地には 人と国とが あった
それは 数十年 数百年の 昔
かの地には 血と戦とが あった
それは 物語
もはや語る者とてない 忘れられた物語
それでも かの地に生きていた
氷のように 焔のように
鋼のように 葦のように
陰のように 陽のように
それでも かの地には 生きていたのだ
百万の夜と ただひとつの 朝を 抱いた男が
百万の哀しみと ただひとつの喜びを
かの地に ふたつの 国があった そして ふたつしか なかった
名前すら 必要としない
こちらと あちら
北と 南と
自分でないとすれば すなわち 相手だった
自分でないとすれば
これは 物語
かの地に 生きていた 男の 物語
そして今 かの地には 砂と風とが いまだ 彷徨う
『ここに、いたから』
『あなたに、逢えた』
永遠は、そこにある。
お前の側に、いるよ。
『鴉』:終。
『エリカ』
ヒースの別名。ヨーロッパ原産、酸性土壌を好むツツジ科の
常緑樹。初冬から春にかけて黄や赤紫の小花をつける。主
に荒野に自生するので、ヒースとは荒野を意味する言葉とし
ても用いられている。花言葉は、『孤独』『裏切り』そして『博愛』。