百万回目の告白。
ざぐり!と凄まじい音を立てて、サンジの足首までが砂に埋まった。
同時に、身を走ってぼぎりという鈍い音と痛みが脳天まで突き抜けるが、サンジはあっさりとそれを無視する。飛び降りてきた崖の高度など、元より考慮の範疇外だった。
片足ずつ砂から抜いて、サンジは周囲のものを観察した。
折れた剣が目に入る。血まみれだ。
そして転がる人、人、人。
ゆったりと歩きながら、サンジはその中に見覚えのある顔を見つけた。
ゾロを散々甚振っていた、海賊崩れ達の親玉だ。気絶しているのか死んでいるのかは、サンジの知ったことではない。
サンジはその男をまたいで、歩いた。
何歩目かはもう忘れていた。
砂浜は、赤く茶色く汚れている。
見苦しい物体が、そこかしこに転がっている。
血の臭い。錆の臭い。鉄の臭い。どれも大差ない。
サンジは歩きつつ、盛大に眉をしかめた。
ちらりと、視界の端に、朱鞘が見えた。半分ほど砂に埋まっている。
気分が悪い。
胃の奥がむかむかして仕方ない。
吐きそうだ。足も痛い。全てが不愉快である。
元凶が何かは、とっくにわかっている。
サンジは砂を蹴散らして歩いた。
そうでもしなければ、怒りが収まりそうにない。
自分の馬鹿さ加減にだ。
あの金髪ガキ、店に帰ったら絞める。
物騒な決心をして、サンジは最後の距離を詰めた。
いつものポーズで浜辺に立ち、唇を歪める。
昇りかけた朝日が、世界を照らしていた。
死闘の、跡を。
きらきらと。
サンジは鼻を鳴らした。
「テメェ、なんていいザマだよ」
まったく、くだらねぇったらありゃしねぇ。
結局、いつも通りの事じゃねぇか。
もう、数え切れないほど繰り返した、飽き飽きした展開。
何度も何度も何度も言い古した罵言。
………いい加減に言葉が尽きないのかと、この愚かさに付き合っている自分にも呆れる。
「みっともねぇなァ、たいそうな怪我ァこさえて」
思い切り嫌悪感を滲ませて揶揄る。
その間に、ぱたぱたと、何かが勝手に頬を滑り落ちて音を立てて。
「何処までも生き汚ねぇ馬鹿だ」
サンジは、まるで親の仇みたいに、じっと足元に出来たちっぽけなその染みを睨んだ。
男が横たわったまま、ぼそりと呟いた。
「……………なんだ、お前そんなに俺が好きか」
うるせぇ。
『百万回目の告白。』:END
綺麗な唄をうたいたい。
本当は貴方の名など知りたくなかった。
この海を奪わないでください。
貴方に心があるならば。
只ひとつお願いがあります。
死の間際まで、どうぞ私を振り向かないで。
私は金の光を夢見るのです。
貴方がいない世界がどんなに幸福か。
私はそれだけを夢見て呼吸しているのです。
貴方に心がないならば。
どうか今すぐこの息の根を止めてください。
貴方を好きだと言ってしまいそうになる。