百万回目の告白。
耳鳴りがする。
体中から流れる血液の音が肉を伝い頭蓋骨を揺らしその中で反響して、まるでさざ波のようだ。
どくどく、どくどくと溢れ出して行く。
このままでは、胸の奥の方にぎゅうぎゅうに押し込めて蓋をしていたものの重石が無くなって、ひょっとしたら表面まで浮かび上がってきてしまうんじゃないかと、ゾロは余計な心配をしていた。
ボロボロの体。
砕けた指、折れた足、潰された肩。
裂けた唇、捩れた腕、破裂した内臓。
千切れた耳、捻った足首、嗄れた喉。
破れた皮膚、剥がれた爪、切れた神経。
ゾロは、体中を隅々まで探り、なにか力が残っていないか確かめた。
体温は極限まで下がり、自分の心音すらもう血液の海鳴りに紛れて聞こえない。
浮遊感。これは、何処までも深い穴に落ちていく、浮遊感だ。
それはとても、とても魅力的で、出来ることならこのまま全てを任せきってしまいたい程だった。
何故ならこの痛みから解放されるなら、何でもするという奴なら腐る程いる筈なので。
ゾロがその仲間に入っても誰一人として文句は言えない程の痛みなので。
それでもやっぱり。
ゾロは瞼に力を込めた。
千の痛みと万の苦痛を伴うその作業を、ゾロは行った。
少し、瞼が痙攣した。
少しずつ、少しずつ、まるで世界全てと同じくらいの重さの瞼が、上がっていく。
だんだん薄れていく。
もう、痛みすら感じなくなって。
その事実は大いなる恐怖なのかもしれなかった。
酷く眠く、酷く辛く、体の末端から泥になっていく感覚。
ゾロはそれでも、瞼に力を込め続けた。
目を開けろ。
目を開けろ。
何の意味もない事は知っていた。
何故かは自分でもわからなかった。
それは、何かの為ではなく。言ってしまえば生きるためでもなく。
笑うことと同じ。愛することと同じ。戦うことと同じ。
只、目を開けるために目を開けるような、そんな。
目が眩む。
産まれたての雛鳥は、こんな光を見たのだろうか。
金色。
太陽の光が、金の髪に反射して。
ゾロの網膜を焼いて、きらきらと。
きらきらと。
きらきらと雫が光って落ちた。
舐めればきっと塩辛い。あれは海だ。
ずっと掴みたいと思っていた答えは、そこにあったんだと。
「……………なんだ、」
きらきらと、零れ落ちる。
白い頬を滑って、零れ落ちる。
まるで痛々しいほどに、赤裸々じゃないか。
これより綺麗な告白は、きっとこの世界の何処にもない。