エピローグ。













夕日の沈む丘に、一人の男が立っている。
その髪を吹き散らされるままに、立っている。

夕日の射す丘。白い花の群生。
絵画のような景色の中に、独り立っている。

「……あんた、泣けばよかったんだよ」

目を閉じる。
此処に還って来たかったんだ。

「そんな風に想われたらさ、俺」


此処に、帰って来たかったんだよ。


「──すごい、幸せじゃないか」


一面の白い花。
幸せだよ。


「一番、一番、幸せで」



もう追いつけない。



「そして限りなく不幸だよ」



唇が、笑みの形に歪む。

此処に帰ってきたかったのは。
──景色を見渡す為じゃなかった。

そんな事もわからなかったなんて。


「あんた、やっぱり馬鹿だったんだ」



そうしてシーザーは、静かに静かに泣いた。