糾弾されたくないのなら、そもそも人殺しなどするものか。


国益とは便利な言葉だ。
味方の犠牲には耐えられず、敵ならば躊躇いなく殺せるのか。
全く都合の良い事だ、守りたいものは皆に存在するというのに?

自分を受け入れてくれた。ここ以外を知らなかった。この為に生きたいと思った。
だからこの地に尽くす。
なんて単純だろう?全くお笑い種で、悪い冗談だ。論理の類は何処へ行った。

冷徹機械の行動理由は、たったそれだけか。何でそんな事が肯定できるだろう。

どうして負けてはならない?
どうして勝たなければならない?
何度も問うた事がある。

戦場に散る兵だとて、守るべき命ではないのか。
この国という形に、囚われる必要は?


わからない。
結論も出ない。
自分の正しさなんてとても信じられそうにない。

ただ。


だからといってどうすればよかったんだ。


軍人になどならずに畑を耕して、罪からは縁遠く、騒乱を傍から眺め、愚かだと悲しめば良かったのか。
人を殺す事もなく、敵を殺す事もなく、味方を殺す事もなく──理想を殺す事も、なく。
他人を不幸にせず自分が幸せになれる生き方を、探せば良かったのか。
どだい無理な話だった。出来そうもない。
すぐそこに見える場所で、自分以外の血が流れていた。傍観者にはなれず、卑怯者にならばなれそうだった。

自分は強くなかった。しかし何も出来ないほど弱くもなかった。逃げる事は出来なかった。
守っている国に、守られるしかなかった。
行動の指針を、精神の帰結を、全ての拠り所を、それに求めるしか……なかった。

守るための戦いだと、言い訳するしか、なかった。
自身が加害者だと、誰より知っていたとしても。



それ故に、まさかそんな言葉は口に出せなかったとしても。