夢の果て。
帆を張って。
海に出た。
走って。
つまずいて。
血を流して。
どんなに慟哭しても。
それでも日は登った。
そして沈んだ。
世界はひとりでに回る。
………また、走った。
遠い、遠い。
見えない、果てを。
「いつも………夢、みてた」
いつでも。
何をどうやっても、よ。
なんか足りなくてどこか欠けてた。
だからお前は必死に追って。
俺は必死に負ったんだ。
でも、どんなに藻掻いて、足掻いて、のたうって血を吐いても。
それだってひたすら不完全で………
なんでも出来る、主人公には、なれやしなかった。
けど。
だから、俺がいる。
だから………お前がいた。
それが、答えだ。
俺がうずくまって、死にそうにへたばってるときに。
まさしく身も心もズタボロってのになってるときに。
優しく頭を撫でるとか。見守ってるなんてそんな奴にゃ惚れねぇんだよ。
さっさと歩き出せばいいじゃねぇか。
俺に、その背を向けて。一瞥さえくれずに、颯爽と前を見て。
テメェはそうするだろ?
いつだって、お前の夢が傷つくチャンスはありすぎて。
おちおち振り向いちゃいられない。
知ってるからだ。
俺が、勝手にくたばってられやしない事を。
死んでも止まらず突っ走る、曲がるくらいなら折れちまう、刀をよ?
そんなの見せつけられて、そのまんま放っておくわけねぇって。
傲慢なまでの確信で。
俺が。
背中を合わせて。
そこに立つって。
お前を殺すのは、俺だって。
知ってるからだ。
怖いんだぜ?
怖いんだよ。
ひとりで、生きるんじゃないってことはさ。
誰かを特別に思ったり。
何かを手に入れたいと思ったり。
望みを、叶えるのは、それはスゲェ、怖いことなんだ。
でもひとりで生きてるんじゃねぇから。
ただ生きてるんじゃねぇから。
夢を追って、走れる。
さっぱりと死ねねぇ俺が、お前の足ひっかけて転ばせてやる。
お前は突き抜けた馬鹿っぷり見せつけて、俺の仕事を作ってりゃいい。
相互理解なんてクソくだらねぇ冗談。
お前と俺は。
絶対ェ、わかりあえねぇから。
いんだよ、それで。
守るために、生きて。
――――生きるために、守るんだ。
ソレがなくなったら困るの、俺かもな。
潔く死ぬ事が、出来ちまいそうだから。
死ぬほど、悔いを残しといたら。
やっぱ俺も、死ねねぇだろ?
お前の夢の果てに、俺がいるってこと。
そのホントの意味を。
いつか、教えてやるから。
…………………内臓は、まだはみ出てねぇ。
血が止まってねぇから、心臓も、まだ動いてる。
走馬燈は………なんか見た気もするが。
気のせいなので却下。
なにより。
馬鹿みてぇに馬鹿馬鹿しい馬鹿がまだ死んでねぇ。
馬鹿みてぇに眩しい。
汚れた夢が。
だから。
俺は。
…………この馬鹿を誰かどうにかしてくれと思ったことなら何度もあるぜ?
でもま、ホントに誰かにどうにかされやがったらオロすから。
握りしめたオッサンの腕に、力を込めた。
足を踏みしめて。
思いっきり格好つけてやる。
にやりと笑って見せた。
満足そうな視線が返った。
OK,Darling.
「「さあ、いくか」」
夢の果て。:終。