「──英雄になれたなら、どうする?」
そよ風と共に、後頭部にキスするように優しく誰かがささやいた気がして、ゾロは振り返った。
けれど、そこにはただ青い空があるばかりである。
LONG ISLAND ICED TEA
「ナミさん、ロビンちゅわん、ご飯の時間だよ~! 野郎ども!!!! メシ!!!!!!」
1日7回、食事とおやつの時間に規則正しく提供される猫なで声と罵声のサンドイッチ。もうそんな時間かと、ゾロはダンベルを甲板に下してキッチンへ向かった。
そのゾロの脇を、競うようにチョッパーとウソップが走り抜けていく。そう慌てなくても飯はなくならないが、腹が減っているのは自分も同じなのでゾロも足取りを速めた。
ドアを開いて中に入っていくブルックの後ろ姿が見える。それに続いて入室すれば、ゾロは結局一番最後だった。この船のクルーは食い意地が張りすぎている。
「んん~、このお肉柔らかくっておいし~い! まいったな、また食べ過ぎちゃう」
「ナミさんにダイエットなんて必要ないよ~v もちろんロビンちゃんもね。お茶のお代わりは?」
「ありがとう、いただくわ。今日のご飯はウェストブルーの郷土料理風?」
「そうそう。同じ素材でも味付けを変えると風味が違うからね。ちょっとでも気分を変えて──ほらゾロ、水だ。喉渇いてるだろ」
ロビンと会話しながら、サンジの手は別の生き物のように器用に動く。料理長のほか副料理長も部門料理長も料理人も使用人も皿洗いも給仕役も一人でこなしてしまうサンジは、自分の仕事が完璧でなければ死んでしまう生き物みたいだ。甘く冷たいレモン水をピカピカに磨いたグラスを使って液体の宝石に格上げして、ゾロの前にいつの間にか差し出してくる。マジシャンも兼ねる。
喉が渇ききっていたゾロはすぐに口をつけた。仰向けになるほどのけぞって1口で全て飲んだ。グラスが机に戻される前に、2杯目が注がれる。
「脱水には気を付けろよ」
ゾロは答えなかった。すでに2杯目を飲んでいる途中だったからだ。
渇いた体に水がしみわたっていく心地。水を飲むと、喉が渇いていたことに気付くのはなぜだろう?
ゾロは、いただきます、と手を合わせた。すでに祭りのような食卓に参戦する合図だ。
茶色のソースと溶けたチーズのかかった肉は、分厚いくせに歯ですぐに噛み切れる。付け合わせのマッシュポテトと交互に口に運んで、ゾロの好きな白米も一緒に掻き込む。隣の変態サイボーグが、ゾロが次に狙っていた皿からごっそりとコロッケを奪い取っていく。かぼちゃだろうか。それともカニクリーム? ゾロはジャガイモと肉のやつが一番好きだ。
危機感を同時に覚えたらしいウソップとチョッパーが順にひとつずつ取っていったので、ゾロは最後の1個をさっと自分の皿に乗せた。出遅れたブルックはこっそり、フランキーの皿から掠めている。
大きな皿が空になった次の瞬間には、野菜と鶏肉のトマト煮込みのボウルに変身していた。
「昼には次の島に着くから、みんな準備しておいて。結構大きな町があるみたいよ」
「図書館があるといいなー」
「おれは、安全なところであってくれればなんでもいいよ……」
ウソップの言葉はジョークだ。グランドラインに「安全なところ」なんてあるはずはない。
「島に着いたら、チョッパーとロビン、それにサンジ君は買い出しね。ウソップとブルックは船番。ゾロは刀を研ぐタイミングでしょ? フランキーは私のボディガードお願い」
ナミの指示に、皆それぞれに頷く。
今回の船番がくじ引きではないことに、誰も何もいわなかった。だが、空気が一瞬ひり、としたことにゾロは気付いていた。生き物の呼吸は読みやすい。
まだサンジに船の番はさせない。そして同行者は鼻の利くチョッパーと抜かりのないロビンだ。ナミは、新入りを信用していない──ロビンも、フランキーも同じだ。それは好悪に関係がなく、ただ、この船の安全を守るための最低限のルールで、ゾロはナミのやり方に文句をつける気もなかった。ゾロの無計画に手綱を付けるのが彼女の仕事だ。
ナミの考えに気付かないほどサンジが鈍感であればよかったのだが。
変に不自由に育った男は、自分だけが我慢すればそれでいいのだ、といったような自己陶酔的な健気さすらも持てないらしい。ただ、そうだろうな、という目をして世の中を斜めにみているのだった。期待しないことに慣れすぎている。
空になった皿を隠しては新たな様々な料理に並べ替えながら、サンジはへらへらと笑っていた。
サンジがゾロと目を合わせないのが、故意なのか偶然なのか、ゾロは測りかねている。どちらにしろ遠慮なのだろうと思う。
彼は居場所を探している。
「ゾロ。18時の方向に船団が見えるわ。旗はまだわからないけれど、こちらを追いかけてきているようね」
この船のどこにいても同時に見張りができるロビンが、スプーンを置いて静かに言った。
「そうか」
ゾロは軽くうなずくと、いつもの通りにすることにした。
海軍か? 海賊か? 海賊狩りか? 心当たりはありすぎて、特定する気も起きない。それに、何にしろ迷う必要もないのだ。
「じゃあ停船だ。背中を向けんのは性に合わねェ」
わいわいと打ち合わせるクルーの中に、恐怖をあらわにする者は一人もいない。ウソップでさえ、もうおびえない。冒険に冒険を重ねた結果、そこらの海軍上級将校くらいなら一ひねりの実力を持っているのだ。たとえ大船団が相手でも、それだけで浮足立つ必要はない。
錨を下してから船尾に立つと、追手はすぐそこに迫っていた。自船を戦場にするのは嫌なので、煩鳳砲を手当たり次第に撃つかと考えた矢先、サンジが隣に立った。
「……連れていってやろうか?」
ゾロは考えもせずに頷いた。そのゾロの二の腕をつかんで、サンジが軽く甲板を蹴る。
ぼん!
爆発のような音とともに、サニー号の大きな尻が転覆寸前まで海の中に沈んだ。そのときには、ゾロの体はもう空にある。
ぼぼぼぼぼぼ、と爆発音は連続していて、その音とともにゾロは空を飛んでいた。青い海を下に見ながら青い空を、シーツを切れ味のいいハサミで断つようにして横切っていく。鳥にしか許されない世界は爽快だった。
空をかける男にぶら下がりながら、ゾロは足元にたかるアリのように見える「大船団」を見下ろして呟く。
「……イイなァ、これ」
手を離せ。
言う前にすでにゾロの体は自由になっていた。びょうびょうと音を立てて落下するゾロの目は、船団の真ん中でひときわ大きな首艦を見つめている。そう、弱い者いじめなどはつまらない。一番強い者を倒して済めば、余計な血も流れないのだ。
ゾロは着地の瞬間一回転して、ついでに敵船を縦に真っ二つにした。
「!!」
傾く甲板の上、正面から雨のように浴びせられる銃弾を、ゾロは全て刀で弾いた。
後ろは構う必要がなかった──考えもしなかった。ゾロが親玉の首を斬り飛ばすときには、すでに三ダースの銃とその持ち主が、海に蹴り込まれていたからだ。
「──テメェは簡単に、背中を預けるなァ」
一瞬で頭をつぶされ、てんでんばらばらに逃げ出そうとしている雑魚船どもと、真っ直ぐにこちらに進んでくるサニー号は対照的だ。ぐらぐらと揺れる船の右半分の残骸、どんどん沈んでいくそれの上で器用にバランスをとりながら、サンジは煙草に火をつけた。
「おれが守らなかったらどうするんだよ? 背中の傷は剣士の恥なんだろ?」
「あり得ない話は、しても意味がねェ」
「…………」
「──お前はわざわざ自分を疑うな」
サンジが夜中に跳ね起きて、しばらく信じられないような顔であたりを見回すことも。キッチンを毎日毎日、宝物のように磨くことも。戦闘となれば、ほかの仲間より前面に出てこようとすることも。ゾロにはどうでもいいことだった。流れてくる紫煙のほうが気になるくらいだ。
どうしてそう、「ここにいていいこと」を確かめようとする?
息を吸って吐くのと同じくらい、この男は当たり前に仲間だ。それなのに、とうの本人が一番、地獄にいなくていいのか不信に思っている。
サンジはいいコックだ。
女好きなところが玉に瑕だが、心が優しく腹が減っている人間を見過ごせない。ゾロには直観的にそれが理解できたし、船にはコックがいなかったのでちょうどよかった。
だから、腐った国から王子を1人さらってきた理由は、つまりはただ単に惚れたからのことで、誰に責められるいわれもない。サンジ自身に責められる理由はもっとない。たぶん、おそらく、ない。仮にあっても気にしない。
ふぅー、とサンジは長く煙を吐いた。
憂いを帯びたその横顔を眺めることもしないまま、ゾロはすでに、この背中が永遠に傷つけられることはないことを確信していた。
+++ +++ +++
「これは何だ。なんで花なんか持って帰ってきやがるんだよ」
「食えねぇのか? 最近は花も食べられるって聞いたが」
「そりゃァ専用に栽培してるのがほとんどだ。普通はわざわざ食うような味じゃねェよ。それに、ルピナスの花は毒があるからますます食えねェ」
サンジがそういうので、ゾロは採ってきた「食えそうなもの」の山から色鮮やかな花の束を抜き取ろうとした。
その前に、サンジがするりとそれを奪い取る。
「──まあ綺麗だから、キッチンに飾っておいてやるよ」
「誰か食わないように気を付けろ」
「花瓶に活けてある花を食うほど節操のないやつはいねェよ。……いや、チョッパーは草が好きだったか?」
サンジは戸棚の奥から大事そうにしまってある花瓶を取り出すと、花を丁寧に水切りした。
ゾロが適当に折り取ってきたそれは茎の長さもまちまちで、生け花としてはだいぶ不格好にならざるを得なかったが、その鮮やかな色どりがあれば些細なことだ。
サンジはちょいちょいと葉の位置を整えながら、なんでもない風に言った。
「ルピナスの花言葉を知ってるか?」
「そんなもんに詳しい男がいたら気持ち悪いだろ」
「喧嘩売ってんのか、ゴラァ」
そのころには、サンジはすっかり仲間の一員で、シャツにエプロンを重ねた姿は少し所帯じみてさえいた。
荒れた指先で、ゆっくりと花の頭をなでる。優しく、甘く。
「『always happy(いつも幸せ)』……昔はひねた気持ちでみてたが、今はそうでもねェなァ」
「あ? なんでだ?」
「……テメェにはまったく、これっぽっちも、ネズミの小指のきれっぱしほども関係ねェ話だよ……」
+++ +++ +++
サニー号の風呂は広い。
一週間に一度くらいしか利用しないゾロであっても、広い湯船はそれなりに好ましかった。
ゾロの隣でだらりと溶けている、毎日風呂に入って身づくろいをしている男は言わずもがなだろう。サンジは湯船のふちでうつ伏せになりながら、全く子どものようなふるまいをしていた。
「おいやめろ、水が跳ねる」
「よーしチョッパー、今度はウソップに水鉄砲作ってもらおうぜ」
「それ楽しそうだな!」
「おれは普通の水鉄砲なんて作らないぜ。どうせなら水流をスクリュー回転させて攻撃力をあげてやる」
「それ普通に殺傷能力あるだろ!」
こうしてみると、みんな揃って精神がコドモである。チョッパーは許すが、ウソップや、ましてやサンジなどはもっと落ち着いていいはずなのに、水鉄砲の代わりに水かけ遊びに興じている。
これがこの船のナンバー2とは、見ただけでは絶対にわからないに違いない。
「風呂に入るとアイスが食べたくなるの、なんでだろうなぁ」
「ホントだな。体が熱くなるから、冷やしたくなるのか?」
「アイスなぁ。生乳切らしてるからアイスクリームは難しいが、シャーベットくらいなら何とかなるぞ」
湯船に盆を乗せて、酒とシャーベットなんて贅沢過ぎるなとゾロは思った。
体が温まると眠くなる。風呂ではしゃぐのは子供だが、風呂で寝るのは老人だと気付かないまま、ゾロはいつの間にか眠りの淵に招かれていた。
「────」
起きたら髪の毛が洗われて、着替えさせられた上にハンモックに寝ていたので、どうやらこの船には働き者の小人がいるようだ。
小人の集合体のような男は、すでに手の中に小さなシャーベットを用意していた。体温を下げろというのだろう。
「──リラックスするのはいいけどな、外じゃ気を付けろよ。寝首かかれてからじゃ遅ェぞ」
「ウチならいいのか」
「……ウチにゃ、テメェの首を狙う奴はいねえからな。おやつは獲られるだろうけどな」
+++ +++ +++
ばき、と頬骨が張り飛ばされてひび割れる音がした。
「テメェ……!!!」
ギラギラと獣のように輝く目は、そのとき確かにゾロの首くらい嚙み千切ってしまいそうに激昂していた。
蹴らずに、殴った。
「勝手な真似をしやがって……!」
今のサンジは火だるまのようだ。憤怒の劫火が周囲を取り巻き、熱気で壁が焦げるかのようだ。ただ、その中心部にいてゾロの心は静謐だった。
「おれは死なねぇ」
「まだ言うか!!」
「──世界一になるまで、おれは死なねぇ」
重力を信じるように、ゾロはその「事実」を信じている。たとえ常人なら死ぬような真似をしても、ゾロは死なない。こんな風に、クルーに心配をかけ、わがままを通し、死ぬようなケガをしても、夢を叶えるまでは死なない。
──わかっている。
サンジのような男にとって、ゾロの生きざまを隣で見ているというのは、時に耐えがたい苦痛だろう。ゾロは気が狂っていて、サンジが大事にしているものをギロチン台にかけて平然としているのだから。
わかっている。
サンジがこうやってゾロを殴りつけ、罵倒するのは、どこまでも結局はゾロのためなのだと。
しかし、だからこそサンジは、どこまでもゾロには一歩及ばないのだ。
「テメェが死んだら……この船は! ナミさんは!!」
わかっている。
ゾロがいなくなれば、この船のクルーはバラバラになるし、ゾロを愛する女も心底嘆き悲しむ。そして、目の前の男はその悲劇を防ぐためなら、きっとどんなことでもしてしまいそうだった。ゾロの背を守り、ゾロの道を守り、ゾロの仲間を守りゾロを守るためなら。
それを理解しつつ、ゾロは無茶をやめる気はなかった。ゾロが信念に背くときは、ゾロの魂が死ぬときだ。
「死なねェ」
「ッ、」
「死なねェと約束する。だから、おれの好きにさせろ」
おれにさらわれたときから、お前はおれのもので、その逆はない。
+++ +++ +++
ゾロの目の前には、果てしなく広い海が広がり、その先の栄光へと続いている。
ロロノア・ゾロと三刀流海賊団の名を知らない人間はもういない。
「────」
栄光は今、小さな島の形をしていた。鷹の目ジュラキール・ミホークが、世界一の座に座って待つ島。一騎打ちを前に、ゾロの気持ちは平静だった。
焦りも不安もない。少しの緊張と高揚は、勝利のための必須条件でもある。
島に向かう小舟を出して、ゾロは振り返った。
必ず帰ると信じて見送ってくれる仲間たちがそこにいる。ゾロの才能を知り、努力を知り、ダメなところもまた知った上でその背を支える最高の仲間。
彼らがいなければ、ゾロはここまで来られなかった。
「ナミ」
ナミは最高の航海士だ。
「ウソップ」
ウソップは最高の狙撃手だ。
「チョッパー」
チョッパーは最高の医者だ。
「ロビン」
ロビンは最高の考古学者だ。
「フランキー」
フランキーは最高の船大工だ。
「ブルック」
ブルックは最高の音楽家だ。
「サンジ」
──この男は最高の。
あっさりとその名前を口にした瞬間、ゾロは物語の主役で、望む全てが手の中にあった。
そしてその全てが、全く同じように、皆が皆──とても大事だった。
王冠に百個もついている宝石のように大事だった。
ぞっとした。
「──おいゾロ! ゾロ!!」
泣く子もますます泣く元海賊狩りの頬を、遠慮なくぐいぐいと引っ張って許される人間はひとりしかいない。ゾロがキャプテンと認める相手、ルフィである。
鉛のように重い頭を振りながら、ゾロは苦労して瞼をあけた。
起き抜けには鬱陶しすぎるほどに元気なルフィの顔を押しやり、ゾロは一瞬ぎゅっと目を閉じた。なんだありゃ、恥ずかしい夢を見た。
気付けばここは医務室で、体が木組みの人形のようにこわばっているところをみるにだいぶ長い間ゾロは眠っていたらしい。
「ゾロ、あんた能力者にころっとやられてたのよ。本ッ当に単純なんだから!」
「……能力者?」
バカにしたように見下してくるナミは無視して、ゾロは周りをぐるっと囲んでいる仲間の中からロビンを選んで見上げた。
「催眠系の能力ね。その人が理想とする人生の夢を見せて、それを受け入れてしまうと目を覚まさない。夢を見せてしまうことさえできれば、ほとんど完璧な能力といえるわ。だって、幸福に抗える人間はいないのだから」
それなのになぜゾロは戻ってこれたのかと、知識欲の旺盛なロビンは興味深そうにゾロを見返した。
しかしゾロは、穴があったらほかのやつらを全員押し込んで蓋をしてしまいたい気分だったので、もうそれ以上口を開くのはやめた。
「──ロビンちゃん、それは買い被りじゃないかなァ? そのクソ野郎はただ単にいつもどおり寝てただけってことはない? だって海牛並みに鈍感だし寝汚いから、たとえ土に還るまで寝腐っててもそれはそれで自然──」
「黙れクソコック」
ゾロは全て言わせる前に、その最低な野郎の頬を思い切り殴り飛ばしていた。
ゾロに優しくなく、ゾロに尽くさず、ゾロにとって都合の悪いことしかない諸悪の根源。
突然の暴力にチョッパーとウソップが震え上がるのを尻目に、油断なくベッドの脇に置いてあった刀を拾う。今は不意を打ったが、自分に一歩及ばないなどとはとてもいえない相手である。丸腰の状態のままでは一方的に虐殺される可能性が高い。
実際、無言のまま、ゆらり、と立ち上がった黒い影は、殺人鬼の目つきをしていた。
だが、ゾロはまったく怖くなかった。
サンジ以上に据わった目をしている自信があった。
いつも通りに寝ていただけだ? 海牛並みに鈍感だ? ああ、それであればゾロは本当に幸せだっただろう。誰より強く優しい完璧な人生を生きる。
ゾロがそんなふうな英雄だったなら、特別に気に入らない石ころなんて物語には存在しないのだから。
(……お前が眼中にない人生を、)
言いたくはない。決して言いたくはない、が。
この羞恥を自分だけが味わうのは理不尽で、言わずにはいられなかった。
「……テメェのために戻ってきてやったんだよ!」
LONG ISLAND ICED TEA ロングアイランド・アイスティ
アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランドで生まれたカクテル。
中身はドライ・ジンをベースに、ウォッカ、ホワイトラム、テキーラ、ホワイト・キュラソー、レモン・ジュース、コーラであり紅茶は一滴も使わない。
それなのにアイスティの味わいと色そのものが表現されている魔法のカクテルである。